「お金の見える化ワーク」とは
時間・意志力・お金――。「自分軸手帳」では、これら3つを自分軸を構成する資源だと考えています。
今回ご紹介する「お金の見える化ワーク」は、この中の「お金」と向き合うワークです。
そう聞くと、「収支のバランスを整えよう」「投資・消費・浪費をモデル比率に近づけよう」などというイメージを抱くかもしれませんが……このワークの目的はちょっと違います。
「自分が人生で本当に大切なことを見つけ、自分軸のあるお金の使い方へと近づけていく」――それがこのワークのゴールです。
「お金の見える化ワーク」に取り組むメリット
お金という資源の全貌が把握できると、たとえば以下のようなメリットがあります。
ところが、ユーザーコミュニティ「自分軸手帳部」の部員さんでも「……実は、まっしろです」という人が少なくないのがこのワーク。
このガイドを読むあなたも、もしかしたら「取り組むのがちょっと憂鬱……」と気持ちを抱いているかもしれません。もしそうだとしたら――その思いの裏側には、たとえば以下のような気持ちが眠っているのかも……。
そこで、まずはこれらの思いを乗り越えてワークに取り組むメリットを確認しておきましょう。
◆「家計管理?なにそれ、おいしいの?」
資産や日々のお金の使い方を見直すこのワーク。「つまりは家計管理でしょ?わざわざ手帳で取り組む意味って?」と思うのも、無理はありません。
突然ですが、イソップの寓話「3人のレンガ職人」をご存知ですか?
【あらすじ】
旅人が、道の脇でレンガを積んでいる一人の男Aに出会います。
旅人「いったい何をしているの?」
男A「レンガを積んでいるのさ」
もう少し歩くと、レンガを積んでいる別の男Bに出会います。
旅人「いったい何をしているの?」
男B「大きな壁を作っているのさ」
さらに歩くと、レンガを積んでいる別の男Cに出会います。
旅人「いったい何をしているの?」
男C「偉大な大聖堂を作っているのさ」
同じ仕事をしている3人ですが、その意義付けは三人三様。モチベーションが異なるであろうことは想像に難くないでしょう。
「お金の見える化ワーク」もこれと同じ。ただ「お金の使用状況と蓄えを把握する」と捉えれば単なる“作業”とに思えますが……あなたならではの「理想の生活」「心地よい暮らし」「自分軸に沿ったお金の使い方」を目指すための第一歩と考えると、このワークに意義が見いだせるのではないでしょうか?
◆「現状を目の当たりにするのがこわい……」
「我が家が赤字だったら……」――そんな現実、想像するだけでこわいですよね。なんだか取り返しがつかないことをしてしまったのでは……とパニックにも近い気分に陥る人もいるかもしれません。
でも、このワークは、ダイエットにおける「体重・体組織測定」と一緒。ダイエットでは、現在の体重や体脂肪、筋肉量などを定量的に把握すれば、次なる方向性を具体的に選びやすくなるもの。
たとえば……
- 現状把握:体脂肪率を測定
→ 課題の設定:「減らそう(増やそう)」と方向性を決定
→ 改善のためのアクション:有酸素運動をしよう/食事を見直そう
お金についても、まず「現状把握」がファーストステップ。それをどうするかは、そのあと考えればいいお話です。
ちなみに、その先に待つステップも、「節約する」「貯蓄を増やす」「モデルケースに近づける」を絶対的な正解とはしていないのがこのワークの面白いところ。詳しくは後ほど解説しますね!
◆「支出を把握して見直すだけでしょ?」
過去にこのワークに取り組んだことがある人、あるいはファイナンシャルプランナーなどのお金の専門家への相談をしたことがある人にありがちなのが、この思い込み。
支出を把握して、無駄がないか見直すだけでしょ?
一度最適なポートフォリオに辿り着いたから大丈夫!
では、その「無駄」とは?「最適」というのは、何に対して?
先にお伝えした通り、このワークは「自分軸に沿ったお金の使い方」と向き合うワーク。世間一般に「安心」「理想」と言われているものを目指すのではありません。
自身の成長や自己理解の深まり、環境変化などとともに、どんどんアップデートされていくのが自分軸。整えきったと思えるお金を改めて見つめてみると、いつの間にか紛れ込んだ「○○であるべき」という考え方や、大切にしたいことの優先順位の変化などが見つかるかもしれません。
「お金の見える化ワーク」の進め方
お金のワークは、「現状把握→見直す」の2Step。ここからは具体的な進め方と、アプローチのヒントをご紹介します。
▼ Step1|現状把握
見開きのうち、左ページには1カ月当たりの収支を記入します。
このとき忘れてほしくないのが、「自分(我が家)のお金の全体的な構造を大まかに把握する」というスタンス。冒頭でお話した通り、このワークの最終的なゴールは「自分軸に沿ったお金の使い方の実現」です。金額の帳尻をあわせる必要はありません!
ですから、「やりやすい方法×お金の流れがいちばん見えやすいもの」を選択して、ざっくりの金額を把握すれば十分です。
上記を前提に、たとえば1,000円単位で記入した以下の例をご覧ください。
このとき、表の最右部にある「割合」も記入しましょう。全体の構造がよりハッキリ見えやすくなります。
たとえば、上記の例からはこんなことが分かりますね。
- 固定費が支出のほぼ半分を占めている
- 収入に対して、約30%の余剰がある
- 変動費のうちおよそ半分は食費が占めている
――このように、「全貌・構造」を掴むことを意識しながら結果を捉えてみましょう。
◆よくある質問
Q1 :ボーナスなどの一時金や、車検など数年に一度の支出など、一時的に収入や支出が跳ねあがるケースがあります。こういうイレギュラーなブレはどう反映したらいいですか?
A1 :明確なルールはありませんが、おすすめなのは毎月にならして按分するという方法です。
たとえば年に2回のボーナスなら、1回のボーナスを「6か月」で割って、それぞれの月の収入として織り込んではいかがでしょう?
Q2 :夫婦別会計で家計管理しています。自分担当の部分だけでワークを行ってもいいですか?
A2 :もちろんそれでも結構です。ちなみに、自分軸手帳的におすすめなのは、これを機会に、夫婦でそれぞれの収支を棚卸しし、可視化するという方法。とはいえ、それぞれのご事情があるでしょうから、まずはできる範囲で大丈夫。たとえ部分的にでも、取り組んでみることが一歩になるはずです。
Q3 :「家計全体」ではなく、まずは「自分のお小遣い」という範囲に限定して取り組んでみてもいいですか?
A3 :はい、もちろんです!自分のお小遣い=自分でコントロールしやすい部分ですから、とても効果的だと思います。
その結果、「足りないと思っていたけれど、満足度の低いお金の使い方をしているだけだった」と気づくこともあるかもしれませんし、「やりたいことを叶えるためにもう少しお小遣いを増やしたい → 家計全体の見える化に取り組んでみよう」という次の一歩につながることもあるかもしれませんね!
▼ Step2|見直す
現状を把握した結果、支出で高い比率を占めているものに対して、反射的に「ここをもっと絞らなくてはいけない!」と思いがちですが、ちょっと待って!
この時忘れてほしくないのは「自分にとって価値がある/ない支出はどれ?」「それらの比率は、今どんな状態?」という視点です。
たとえば…
洋服やコスメに興味はなし!外見にお金をかけるより、興味あることを学んだ方が満足度が高い!
季節によってメイクを変えることで気分が上がる!プレッシャーを跳ねのけて仕事をがんばる意味でも、これは譲れない!
この2人、同じ「コスメ」に対してどんな価値を見出すかはそれぞれ違いますよね。そして、どちらも正解。自分が満たされることに投資できているなら、それはどちらも幸せなことです。
あるいは、「収入に対して、支出が100%に近い」という数字だったとしても、「=課題アリ!」とは一概に言い切れません。「子どもの教育費など、今まさにお金がかかる時期」「これまで計画的に資産形成してきたから、これからは使う時期にシフト!」という場合には、問題はありませんよね。
- 好きな時間を増やすには?
- 嫌な時間を減らすには?
そんな視点を第一に。世間一般の理想値や、隣の誰かの例に捉われないことをどうぞお忘れなく。
◆自分軸に沿ったお金の使い方を叶えるために
さて、こうして見直しの方向性が定まったら、手帳を活用しながらそれを叶えるアクションへ。
たとえば、価値がある(ない)支出と判断した理由が、それぞれ左のようなものなら。価値がある(ない)お金の使い方を増やす・始める(減らす・見直す)ために、右のようなアクションが挙げられるでしょう。
こうして辿り着いた改善ポイントや次なるアクションは、「お金の見える化ワーク」見開きの右ページの「Step2」の欄に記入。
さらに、より確実な行動へと落とし込むためにぜひ取り入れていただきたのが、「自分軸手帳の他のページと行ったり来たり=反復横跳び」という方法です。
「お金の見える化ワーク」と相性がいいのは、「足し算のワーク」や「引き算のワーク」。「『お金の見える化ワーク』に書いたのに、さらに別のページに同じようなことを書いてもいいの?」と思うかもしれませんが、全く問題はありません!
大切なのは「うれしいお金の使い方のために、必要なアクションをすること」。その計画を様々な場所で目にできた方が、リマインド効果も高まりますよね。
ワークに取り組んだ方の気づき
何にお金を使うと幸せで豊かに過ごせるのか考え、今年は娘と家庭菜園を楽しむと決めた。 だから庭の水道工事は必要な出費だ!
お金の見える化に向けて、事前に直近3ヶ月の家計簿を整理。費目毎にどのくらいお金を使っているかが見えてきた。次は支出削減の検討&実行。サブスク見直し、食費見直し…… 迷うものは一旦やめてみよう
終わりに
「お金」を通して自分軸を見つめるというこの方法を、意外なアプローチと感じたかもしれません。が、他の2つの資源「時間」「意志力」よりもはっきりと数字に見えるものなので、一度腹を括って現状分析と見直しに取り組んでみると、効果や変化を実感しやすくもあります。
最初は腰が重い人がほとんどだと思いますが、いざ始めてみれば、きっと軌道に乗せることができるはず。まずは一歩、踏み出してみてくださいね。